メール

心霊現象なんて信じないけど、不思議なことがあったの。

火曜の夜よ。
その日も朝からこっぴどく絞られて、もうこれ以上続けてやるものかと思ったわ。まったく辟易する、理不尽な理由ばかりなんですもの。

上長に向けてメールを書いていたの。退職の意思と、辛辣な罵詈雑言。愚痴をそのまま送るつもりはなかったわ、ちょっと幼稚で攻撃的だったし。

すると不思議なことが起きたの。
私の書いていたメールが突然、なんの前触れもなくふっと消えたのよ。
何が起きたのかわからなかったわ。サイドバーにある「下書き」の横の数字も、消えていたの。そこには初めから何もなかったみたいに。

翌朝血相を変えた上長が私の席に飛んできて、突然謝り始めたの。いままですまなかったって。びっくりしたわ。人間、こんなに急に変わるものかって、まるで、何かに憑かれているみたいだった。

以来私と会う度、何故か幽霊を見るような顔をするのよね、彼。