上り坂と下り坂

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「助手くん、坂は上りと下り、どっちが多いと思うかね?」
「えっ、上り坂ですか?」
「バカもん、坂を上って振り返れば下り坂だろう! 同じに決まっておる」
「ははあ、さすが博士」
「バカにされてる気もするが……。コホン、今回の装置は『いつでもクダリザカール』じゃ」
「某製薬会社みたいなネーミングですね」
「この装置を靴に付ける。すると人間の姿勢を前に傾ける制御をし、常に下り坂のような感覚で楽に歩けるのだ」
「名前の割にすごいじゃないですか」
「名前のことはもう良い! ……ワシも歳でな、少しでも楽に歩きたいのじゃ。世の中も高齢化社会だしのう」
「流石です。さっそく売り出しましょう!」

 博士のその装置は瞬く間に売れた。人間少しでも楽をしたい。世の中のすべての人がその装置を取り付けるようになったのだ。

 そして楽を覚えた人々は次第に働かなくなり、世の中の経済もどんどん下り坂になっていった。
SF
公開:20/08/27 09:01
更新:20/08/27 09:02

八川克也

ショートショートは難しい。

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