3
2

まただ。
男はため息をついた。

玄関扉の前に、小さな黒のビニール袋。
隣室に住む黒髪の女に頼まれて、彼は数日おきに様々なものを受け取っていた。

最初の袋には半透明の白い小石が二十粒ほど入っていた。
続いて、黒い円形のプランター。
先日はうっすらと紫味がかった土が届いた。

「後生だから、預かって欲しいものがあるのです、必ず取りに戻ります」
女はそう言ったが、男は少しくうんざりし始めていた。

袋をちぎると、中から卵くらいの大きさの物体が出てきた。手紙が添えられ、これを土に入れて水をやり、常夜灯を点けたままお眠りくださいとあった。

夜、オレンジ色の光の部屋に、黒い影が背を高くした。


翌朝やってきた女は卵型の透明な石を手にしてつぶやいた。
「現世の罪で少し穢れはあるけど、思ったとおり、上質だわ」

女はそれをコートのポケットにつっこみ、音無く部屋を後にした。
男は息絶えていた。
ミステリー・推理
公開:20/08/28 08:03

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容