ランチ

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午後0時、チャイムと同時に人の流れが見え始める。変わりばえのないA定食とB定食の2択に悩んでいると、
「悩んでるねー。私はBの焼きガレイにするよ。」
私より遅くきたはずの明日香は、さっと食券を出してカウンターに向かった。
喫煙スペース脇のテーブルはいつも人気がないので、2人の特等席だった。
「やっぱ自分で決めた方がいいと思うよ、この前の件。」
明日香が箸で小骨を避けながら言った。
「言ってくれたら、仕事を辞めるとか、それって瑞穂の望む第一選択肢ではないよね?」
ちくりと、胸に違和感が走る。
「相手の言葉を待って、自分の時間の使い方を決めちゃうのは、第二選択肢って感じがするのね。今日なにしてるの?って聞いて、相手の時間に合わせてスケジュール組むようなもの。」
私は明日香の言葉を反芻していた。
今日も話し足りなかったなぁ、と明日のランチのことを考えて事務所に戻る。
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公開:20/08/28 00:15

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