風の形

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『風の形を見たことある?』
彼は両手広げて宙を切るようにめちゃくちゃに走る。
開きっぱなしのランドセルから色んなものが落ちた。
私はその様子がおかしくて笑った。

『なんだよ、笑うなよ。
俺、見たことあるんだ。
草原みたいな空き地あるだろ?
あそこの草が波みたいになっててさ。
まじまじ眺めてたら草の上を白っぽい風が滑っていたんだ!まるで半月のフリスビーみたいだった!』

あれを翼につけたら飛べると思うんだ。と付け加えた。
その瞳は見たことないぐらいに輝いていて、嘘だとは微塵も思えなかった。
『ねぇ、私もそれ見てみたい』
彼はそう来なくちゃ!と笑って手を引いてくれた。


結局、風の形はよくわからなかった。
彼は今日はよくわからなくて残念だと言った。


でも落としたものの中に紛れ込ませたラブレターはよくわかったらしい。
帰宅後すぐに電話が来たもの。

『紛れ込んじゃったのは風のせいだよ』
青春
公開:20/08/27 21:52

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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