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父のいない私。ずっと不思議な力に守られてきた。
力は自分の事を、防ぎ犯だと名乗る。
実際、ハエ、蚊、ゴキブリで悩んだ事がない。防いでくれているのだろう。大学の同級生に話すと、笑いながらだが、羨ましいと言ってくれる。

そんな私に、パートナーができた。優しい上に、頭がキレる。私にはもったいない相手だ。
が、ある日を境に、私の前から姿を消した。
私は、真っ先に力を疑った。
「ああ。悪い虫が、お前につくのを、防いであげたよ。実は彼、恋愛詐欺師でね」
と力。
「余計な事しないで!親切する加減、覚えて」
「お前が大切って思いは、カルピスの原液じゃないんだ。濃さの調整なんてできないよ!」
「……」
私は黙るしかなかった。その沈黙の深さに、力が一言。
「大切な人だったんだね」

私は正直に答えた。
「うん。二百億円するサファイア……、大富豪から騙し取るのに、あの人の恋愛詐欺師としての力が、必要だったの」
その他
公開:20/08/27 21:44
スクー 防犯カルピス

久保田 人月

よろしくお願いします。
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