いつかの約束

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まだ朝日の気配もない頃。
布団から抜け出し、煙草を買いに行く。
出勤前にコンビニに寄ってもよかったのだが、今すぐ行きたい。そんな気分だったのだ。

駐車場には夏休みの学生が屯っている。
店内にはだるそうな表情をした店員がレジにいた。

『53番ください』

女性が自分と同じ銘柄の煙草を買おうとしていた。

『すみません、それ2つで』

横入りして声をかける。そんな気分だったのだ。
困惑する女性に煙草を1つ押し付け、外に出た。

『あのっ!こまります!これお代です!』
『お姉さんが綺麗だから差し上げたくなりました。ただの気まぐれです』

空が水色になっている。
虫や鳥の声が聞こえる。
彼女は、やっぱり困った顔をしている。

『じゃあ、次お会いしたら私が2つ買いますね。約束です』
『じゃあその時はお願いします』

私達はいつになるかもわからない気まぐれな約束をした。そんな気分だったのだ。
その他
公開:20/08/27 21:29

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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