検出できないドーピング

　ある独裁国家のスポーツ研究所で、一人の博士が喜びの声を上げた。
「やったぞ！　このドーピング薬は絶対に検出できない！　効果も抜群だ！」
　試してみると、陸上でも重量挙げでも水泳でも、すべての競技において驚異的な結果を出すことに成功した。
　国家は早速その薬剤を採用。大会に臨んだ。
　その国はあらゆるスポーツにおいて標準記録を大幅に上回る結果を叩き出した。申し分のない成果だ。観客として見ていた博士はニヤリと笑う。しかし本番はこれからだ。
　ドーピング検査が行われた。
　見つかるはずがない、自信を持って臨んだ博士であったが、ついにある国のドーピング検出システムが薬剤の使用を見つけ出してしまった。

　結果は銀。

　全てのドーピング検出を掻い潜り、一切検出できなかった某国がドーピング検出大会の優勝となった。
　ドーピングも検出も、日進月歩だ。
　博士はガックリと肩を落として会場を後にした。