伝説のスチュワード
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五つ星ホテル勤続三十年になる彼は、業界では伝説のスチュワードと呼ばれていた。
彼の手にかかれば銀器は鏡のように光を反射し、陶器は生き生きとした艶を宿す。
ワイングラスは専用タオルで台座をくるみ、もう一方の手でグラスの中にタオルを折り込んで、内側と外側を滑らせて割れないように絶妙な力加減で仕上げる。
彼の仕事は常に抜かりがなかった。
夏も終わろうという頃、その五つ星ホテルで殺人事件が起きた。第一発見者は伝説のスチュワード。
部屋には飲みかけの赤ワインとグラスが二つ残されており、直前まで誰かと会っていた事は確かだ。
防犯カメラに映った人物は、黒い帽子に黒いコートを羽織り、顔どころか性別も分からない。すべては鑑識にかかっている。
「あの…」
スチュワードがおずおずとワイングラス専用タオルを掲げる。
「申し訳ございません。指紋が気になって仕方がなかったものですから」
事件は迷宮入りになりそうだ。
彼の手にかかれば銀器は鏡のように光を反射し、陶器は生き生きとした艶を宿す。
ワイングラスは専用タオルで台座をくるみ、もう一方の手でグラスの中にタオルを折り込んで、内側と外側を滑らせて割れないように絶妙な力加減で仕上げる。
彼の仕事は常に抜かりがなかった。
夏も終わろうという頃、その五つ星ホテルで殺人事件が起きた。第一発見者は伝説のスチュワード。
部屋には飲みかけの赤ワインとグラスが二つ残されており、直前まで誰かと会っていた事は確かだ。
防犯カメラに映った人物は、黒い帽子に黒いコートを羽織り、顔どころか性別も分からない。すべては鑑識にかかっている。
「あの…」
スチュワードがおずおずとワイングラス専用タオルを掲げる。
「申し訳ございません。指紋が気になって仕方がなかったものですから」
事件は迷宮入りになりそうだ。
その他
公開:20/08/26 08:50
ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。
よろしくお願いします。
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