多面体の村

その村には奇妙な人々が住んでいる。
顔が正多面体もしくは球体なのだ。

村には苗字が六つしかない。
四面体、六面体、八面体、十二面体、二十面体、球体の六つだ。
村の長の一族が球体を名乗っている。

彼らの顔には目も鼻も口も耳もない。
手足と胴体は簡素なチューブ状だ。

彼らは同族結婚する。
四面体は四面体同士で結婚するのだ。

そのため稀に奇形が生まれてくることがある。
例えば各頂点を切り落とした立体の顔を持って生まれるのだ。

そんな赤ん坊は村長の一族に引き取られる。
球体の一族に育てられると成人までに顔は球体になる。

彼らは死ぬと胴体が消える
そして顔は石になる。

死に顔はそのまま墓石として村のはずれの墓地に安置される。

墓地は広大だ。
遥か遠くまで正多面体と球体の石が整然と並んでいる。

こうして彼らは永遠の生、あるいは永遠の死を手に入れるのだ。