葉書月

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『葉月は葉書きの月にします』
という葉書きが郵便受けに入ってたのは、とある8月の朝だった。
消印のない葉書きに、きちんと書かれた宛名。文面では木洩れ日が躍ってた。
『横着してないか?』
そう返事を出したのは10分後。先月は封書だったから、この流れは予想出来た。隣なんだし直接言えばいいのに。けちを付けても、入道雲の特殊文字がスマイルカーブを描いてしまう。
『意地悪。消してもいいの?』
返事の返事は渚の砂の上。慌てて手をかざし波から守る。代わりに雲の切れ端に乗った『横着』が漂着した。
『横着』を砕いて、夜空に散らして花火を上げた。玄関に放り込んで待機。
3分後、頭上でかき氷の雪崩が起きた。
『(@>┰<)ベーッ!!』
真っ赤な舌を出した顔文字が、おでこにひらり。
どうせなら、顔出してくれないかな。次のエフェクトを迷いながら、VR葉書きの『新規作成』を押す。
見れる顔も、結局アバターなんだけど。
青春
公開:20/08/24 22:04

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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