見える景色は違えども

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トラックを一周して競技場を出るとき、僕らは無言で頷き合った。

あいつは右、僕は左にコースをとる。今日はどのくらいの距離だろう。いや、余計なことは考えるな。曲がり角でスタッフが矢印を掲げている。指示どおりに路地を曲がれば目の前は上り坂。あいつの顔を思い浮かべ、僕は減速しないようストロークに力を入れる。

シンクロナイズドマラソンは、初見の周回コースをペアがそれぞれ逆回りで進む。そして再会する場所が、ちょうど半周の地点とどれだけ近いかを競う。

わずかな気の緩みでも距離はズレる。だからひたすらにペアのことを想う。今どんなコースを進んでいるのか、身体のコンディションは万全か、予想外のトラブルに見舞われてないか…。

信じて、とあいつは言った。分かってるよ。同じこと考えてるから、ってんだろ。じゃ、まずはそこの木陰でひと休みしてくか。

今年はやっぱりあの色じゃなきゃな。
最高の金婚式にしようぜ!
その他
公開:20/08/24 18:25
更新:20/09/05 20:39

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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