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 落雁でできた螺旋階段を上っている。足の置き場が悪いとパラパラとその欠片がこぼれ落ちて、深い闇の中に消えていく。
 ずいぶん上まできた気がするのだが、一向に出口は見えない。
 不思議な感覚だ。踏み込む足は、軽やかに次の段へ運ばれていく。疲れというものを感じないままずっと体は動き続けている。
 何時間使用しても疲れない階段として売り出せば、きっと金をがっぽりと稼げるだろう。そのためにもここから抜け出さなければ。

 上る。上る。どこまでも上っていく。まだ出口に辿り着かない。
「はあ……」
 思わずため息が漏れたその瞬間、遥か上のほうから音が聞こえた。
 誰か居るのかもしれない。声を張り上げる。
「おぉい! 誰か居るのか? 居たら返事をしてくれ!」

 何かが下りてくる。
 助けてくれるのか。
 どんどん音は加速していく。
 もう少し、もう少し。

 プチ。

 その音を最後に男は姿を消した。
ホラー
公開:20/08/25 19:27

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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