All, under an umbrella.

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相合傘には魔法が掛かると彼女は言った。
実質は防御壁だけど、可愛いから黙ってた。有病率99.8%の総キャリア時代、政府が破綻と引き換えにくれたのは、一人一本の傘シェルターだった。
パーソナルスペースが限界の命綱。気休めでしかないと解ってた。解ってて、今の外側なんて見たくなかった。
多分誰もがそうだった。SD法違反は承知の相合傘。皆それぞれ傘の下。濾過機が微かに光らせる傘の下だけ、青空が広がってるみたいだった。
傘の柄は彼女に持たせた。理由は不純だけど、彼女は笑ってた。致死率78%のキス。お互い様で今更だから、幸せしか考えないと笑っててくれた。


背中で眠る彼女は、まだ少し笑ってる。
傘を下ろして、初デートで登った『ソラノキ』を見上げる。空へ続く細い骨組みは、巨大な傘の柄だった。頭上を覆うガスの幕。世界はみんな傘の下だった。

幕を突き破って、ICBMの流星雨が降る。
「見て。すごく――」
SF
公開:20/08/25 14:45
ICBM:大陸間弾道ミサイル

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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