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悲しい記憶は棄てましょう。
メンタル保護法が可決されてから早数十年。
嫌な記憶を消し去ることで日々のストレスが激減すると専門家が発表した。
おかげで精神保健所は連日記憶を棄てたい人で溢れている。

『死んだ猫が忘れられず、新しい猫を愛せない』
という人にも丁寧にカウンセリングして棄て去る部分を決めていく。
死んだ猫自体を忘れたいのか、それとも死んだ事を忘れたいのか。
忘れることによって今の猫に対する飼育などに出てくる弊害を説明し共に考える。
いよいよ、というところで大体の人が怖気ずく。

『やっぱり…忘れたくないかもしれない…』

結果が悲しかったといって全てを無い物にするには思い出がありすぎる。
人間とはそういうものだ。
苦しめてきた親を忘れて元気になる人、忘れたことに絶望して記憶を消し続ける人、
悲しさを受け入れて何もせずに帰っていく人。
今日も様々な人を見送る。精神保健所は大忙しだ。
SF
公開:20/08/23 19:21

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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