アワムシ

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僕は虫に寄生された。それはアワムシといった。彼女(メスらしい)は僕の中から語り掛けてきた。彼女の話によると、アワムシは満月の空でしか産卵できず、運よく人間に降り立つことのできたものだけが生き残れるらしい。彼女との生活は数か月に及び、愛着もわき始めたころ、「私達もうすぐお別れね。」そう彼女が言った。「なぜかって、それは自然の摂理だから仕方がないわ。」僕は別れの日になぜか無性に高いところに行きたくなった。月のとても明るい夜だった。「綺麗だわ。とっても。あなたのおかげでここまで生きれたのだから、感謝してるわ。」僕は彼女の言葉を聞くと、屋上の縁に立ち上がり、そのまま足を前に出した。ちょうどいつも横断歩道を渡るみたいに。あれっと思ったとき彼女の声が遠くから聞こえた。「ごめんなさいね。私、満月の空でないと産卵できないの。」僕は自分の口からシャボン玉のような泡がキラキラと月光を受けて飛んでいくのを見た。
SF
公開:20/08/23 18:58

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