新・モーセの杖

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ある浜辺で旧約聖書に登場するモーセの杖が偶然発見された。
モーセの杖といえば、紀元前一三世紀ころ、ユダヤ人のエジプト脱出時に、神の使いだったモーセが杖を掲げると、紅海の水が割れて道を開き、追ってきた戦車や騎兵らエジプトの軍隊を海に飲み込んだとされている。
発見されたモーセの杖が本物か確認するため、物理学者が海上に立つ波に近づけたところ、波が真っ二つに切れたので本物と断定した。また、生物学者が付着していた藻を調べたところ、この杖が世界中の大海原を漂っていたことも判明した。
歴史学者や宗教家が、この杖はモーセが神から授かったものだから、長い歳月を経てもなお海の中で朽ちることなく今まで彷徨っていたのだと主張した。
モーセの杖の木片を採取し、細胞の構造を精緻に分析した結果、クローン技術を駆使して大量生産することに成功した。クローン・モーセの杖が巨大津波や大洪水などを遮る防災用具として役立っている。
SF
公開:20/08/23 07:19
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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