主役争奪戦

「作者の都合で煮え湯を飲まされた挑戦者です。新しいタイプの妖怪に脅かされる古参の河童、元主役、推敲の結果で消された者。そして対するのはご老人です！」
河童と元主役と名前無き者が、シルバーのゼッケンを付けた老人達を睨み付けた。
「参加者の皆さんには、様々な小道具を使い我こそは主役である！ とアピールして頂きます。作家、シナリオライター、映画監督の皆様が主役になり得ると判断した場合、お手元の札を挙げて頂きます。皆さん競技開始です！」
笛が鳴ると小道具に向かって走り出した。老人達は散歩するように歩を進める。
「河童達は意見が割れて相撲を取り始めましたが、監督の一人が興味を示しました。元主役と友人枠は何やら小競り合いか。ハンチング帽のご老人は椅子で寝ている。いや、絵になりますね」
太陽の日差しが老人に影を作り、刻まれた皺が思慮深さを演出する。オッドアイの白猫が膝に飛び乗った。溜め息と札が挙がる。