言わないで

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祖母が家族5人分のケーキを買ってきた。種類はイチゴ、チョコ、抹茶、モンブラン、そしてシュークリーム。両親は兄の試合を見に行っているので、今はいない。
「お兄ちゃん勝ったんだってねえ」
時刻は19時30分、僕と祖母は先に夕飯をすましていた。
「お兄ちゃんまだみたいだから、先にケーキ食べちゃうかい?」
祖母が机の上にケーキの箱を広げた。美味しそうだ。
少し迷ったが、今日はチョコケーキにしようと思う。あくまで今日の主役は兄なのだ。兄の好物は残しておこう。
「チョコにしようかな」
僕はチョコケーキを指さした。
「あーいいねぇそれ、1番美味しそう」
祖母はチョコケーキを皿にのせ、ケーキフィルムを剥がした。
「あ、フォーク持ってこなきゃね」
いそいそと食器棚に向かう祖母。
胸の中で風船が膨らんだみたいに、僕は息苦しくなった。
「やっぱりいらない」
僕は子供部屋に逃げ込み、明日の朝まで出てこなかった。
その他
公開:20/08/24 17:46

まる

よろしくお願いします。

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