支度の死角

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「そろそろ支度しようか」
彼女に遅れて彼はパンを頬張った。いちいちパンをちぎっているのを横目に、彼はぺろりと平らげ食器を下げる。その足で洗面台に向かい、洗顔と歯磨き、整髪を済ませて鏡の自分に惚れ惚れとした。入れ違いで彼女が入ってくるとリビングに戻り、財布やら車のキーを探し一服している。洗面所でするドライヤーの音が消えると、思い出したように皿洗いをし始めた。彼女に化粧の進行具合を何度も確認しながら、待ち時間に携帯をいじる。彼があくびをしたところで、彼女の支度ができたようだ。

『タイムは1時間9分でフィニッシュです!』
「それにしても旦那さんが一服したときにはヒヤリとしましたねぇ。」
「皿洗いでポイントを稼いだか、と思いましたがお化粧を急かしたので減点は免れませんなぁ。出掛ける前に褒めてもいませんし…」

抜き打ち支度試験地区予選。
果たして本大会出場の資格を手にできる男は現れるのだろうか…
SF
公開:20/08/29 23:00
更新:20/08/30 12:34
空想競技 空想競技2020

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

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