リップスティック

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ルビーを削る。
薔薇を煮出す。
ドライフラワーを砕く。

僕は口紅職人だ。

必要であれば星屑を探し、海に潜って真珠を採る。
果物を並べるし、香水も選ぶ。
鍋に蜜蝋や色粉を混ぜ合わせて、たった一本の紅を作る。

小指を切り落とした遊女。
身分差のある恋をした町娘。
手荒れが酷い農家の姉さん。
ドレスを翻してどこぞの王国の姫様が来たこともあった。

運命を変える口紅。
そう言われている。

僕が愛した女性も、僕の気持ちに気付かず運命を変えた。
幸せそうな笑顔が嬉しくて、この仕事を誇りに思ったよ。
迷路で立ち止まってしまった女性たちが出口を見つけられるよう願いを込める。
希望を与えられた唇が、幸せだと言葉を紡ぐ。
どんな材料もその表情より美しいものなどない。

僕は今日も祈るように口紅を作っている。
どうか幸せで。
ファンタジー
公開:20/08/23 19:56

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

Twitter: https://twitter.com/rainy02forest
note: https://note.com/tettio02
Radiotalk: https://radiotalk.jp/program/61359

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