羨望鏡

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瀟洒な雑貨店に入ると、潜水艦に付いている潜望鏡が置かれていた。店主の許可を得て覗いてみたが何も見えなかった。
「この潜望鏡は故障しているんですかね」
「いえ。何も見えなかったのなら、あなたは無欲だったということです。これは、覗いた者が羨ましいと思うことを映し出す羨望鏡です」
店主が紙切れに『羨望鏡』と書いて示した。
「あなたが羨ましいと思うことを想像して、もう一度覗いてみてください」
羨ましいことを思い浮かべてから再び覗いてみると、宝くじで一億円を当てた自分の姿が見えた。
「いま見えたことは、羨望鏡の不思議な力によって正夢になるかもしれません。但し、実現するかどうかは、あなたの普段の行い次第です。実現しないからといって羨望鏡に八つ当たりしてはいけません。必ず災いが降りかかります」
店主の忠告は耳に入らず、幸運の女神のような羨望鏡を買い求めた。幸運の女神ではないことに気づくのは後のことだが。
その他
公開:20/08/23 19:30
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山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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