何が悪い？

　一人の富豪がいた。
　けれど彼の成功は、庶民から賞賛され無かった。彼には常に黒い噂がつきまとっていたからだ。
　彼は、独身だった。その彼が今、結婚を思い立つ女性を見つけた。
「私と結婚してください」
　彼は率直に相手の女性に言った。彼には自信があった。彼の成功と自信漲る容貌には大きな魅力があり、それで女性を手に入れてきたからだ。
「あなたは悪い人だわ」
「なにがです？沢山のお金を稼いでいるから？お金を稼ぐのは悪いことですか？私は犯罪でお金を得ているわけじゃありませんよ」
　彼は堂々と彼女に言った。彼は恐らく、カネにつてこういう難癖をつけられることに慣れていたのだ。女性は、顔を上げて彼の目を見て、
「ううん。そういう悪さじゃないわ。
あたな『感じ』が悪いのよ。
　結婚はあなたとするのよ。お金とするんじゃ無いわ。あなたのお金と結婚して欲しいなら、お金だけちょうだい。あなたはいらないわ」