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"夏"を盗むことにした――この町の"夏"が、あまりにも美しいからだ。
どこまでも続く青空。それを反射する海。砂浜は白くサラサラしていて、その砂粒の一粒一粒が輝いている。
田んぼの傍に立つと、幸せなノスタルジアに浸ることが出来る。
宿に戻れば、縁側に心地よく吹くそよ風。蝉の声に交じって控えめに聞こえてくる、風鈴の音色、扇風機の風音。畳に寝転ぶと、イグサの香り。少しだけ、蚊取り線香の匂いも。
そして……暗い夜空に、満天の星。
美しすぎた。
――だから、盗もうとした。
結果を言ってしまえば、盗むことは出来なかった。"夏"を求める人は多すぎて……私だけの所有物にするのは無理だった。
けれど、代わりに"夏"は、毎年会うことを約束してくれた――もう、何十年も前の話だ。
こうして、今年も"夏の夜"が終わっていく。
シャツにくっついていた蛍に別れを告げ、私は来た道を戻ることにした。
どこまでも続く青空。それを反射する海。砂浜は白くサラサラしていて、その砂粒の一粒一粒が輝いている。
田んぼの傍に立つと、幸せなノスタルジアに浸ることが出来る。
宿に戻れば、縁側に心地よく吹くそよ風。蝉の声に交じって控えめに聞こえてくる、風鈴の音色、扇風機の風音。畳に寝転ぶと、イグサの香り。少しだけ、蚊取り線香の匂いも。
そして……暗い夜空に、満天の星。
美しすぎた。
――だから、盗もうとした。
結果を言ってしまえば、盗むことは出来なかった。"夏"を求める人は多すぎて……私だけの所有物にするのは無理だった。
けれど、代わりに"夏"は、毎年会うことを約束してくれた――もう、何十年も前の話だ。
こうして、今年も"夏の夜"が終わっていく。
シャツにくっついていた蛍に別れを告げ、私は来た道を戻ることにした。
ファンタジー
公開:20/08/19 23:50
11/4~11/13の期間、「勝手に秋のお茶漬けデー」と題しまして、お茶漬けの物語を投稿中!(ストーリーに繋がりはありません)
11/4:「御茶ノ漬駅へようこそ」
11/5:「茶漬湖の底へ」
11/6:「神々しきお茶漬け」
11/7:「お茶漬け勇者の箸と匙」
11/8:「茶漬中毒」
11/9:「米どころ、茶漬けの祟り」
11/10:「茶が先か、卵が先か」
11/11:「檻の中。お茶漬けと一人」
11/12:「お茶漬け博物館」
11/13:「明日のお茶漬け」
お茶漬け、完結。充実したお茶漬けデーになりました……!
Twitter、ゆった~りと更新予定です。
https://twitter.com/dirokichiro?s=09
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