シュウマツ ノ ニュース

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「ニュースを見ないと世間に置いていかれるよ」

別れた妻の言葉だ。TVを見なくなったのはいつからだろう。”忙しさ”を盾に全てから目を背けていた。
芸能人の不倫。どこかで殺人事件が起き、政治家は失言をする。外国のテロ事件、飢餓に苦しむ子供達。

TVが報じれば、訳知り顔で皆が言う。

「世界はおかしい。変えなくてはならない。」
無責任な正義感が嫌いだった。それで何が変わるだろう?
いつも通り始発に揺られ終電まで仕事をする。
僕にできるのはそれくらいだ。

だが、その日は“いつも”と少し違った。

人が街から忽然と姿を消し、静寂と灰色の風景が冷たく広がる。
しばらく歩くと、ベンチに一人ポツンと老人が座っている。

「逃げないんですか?」老人が言う。

「どういう意味ですか?みなさんはどこへ…?」

老人が少し表情を変え、おっとり続けた。

「週末、世界は滅びます。ニュース見ていないんですか?」
SF
公開:20/08/21 11:41
更新:20/08/21 19:45
滅亡短編

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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https://twitter.com/Karatsu_a

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