遠くへ

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 その競技は、どこへでもどんな方法でも、遠くへ行った者の勝ちである。個性豊かな人達が集まり、晴れやかに熱戦の火蓋が切られた。
 無駄な脂肪がなく鍛えぬかれた体の若者は、空中を走って遠くを目指し。
 筋肉隆々の力自慢は、猫球をできるだけ遠くに投げようとして身体に力を入れる。
 審査員の目は中肉中背で小柄な普通の男に注がれていた。周りのエネルギッシュな様子からかけ離れ、男の周りだけ静かで、それが異様な雰囲気だったのだ。男の三匹の蟻たちは、角砂糖を引き50メートル先の女王蟻をゴールとして目指すという。負荷をかけての道のりは蟻にとって途方もなく遠いだろう。
 しかし、この競技は昆虫のものではない。審査員達は失格ではないかとざわつきはじめた。その時だ、男がぱたっと倒れたのだ。男は蟻がたどり着く途方もない先を想像し、気が遠くなったのだ。
 審査員達は意識がどれだけ遠くに行ったのか吟味しはじめた。

 
その他
公開:20/08/21 08:35

ゆらら風

ショートショートは時間を気にせず、読めるのがいいですね。情熱大陸を観て、書いてみたらはまりました。ワクワク、ほっこり、??な素敵なお話を書けたらいいな。
 突然のフォローすみません。まだまだな私の文章をフォローしていただいて、ありがとうございます。
 へこたれず、素敵な世界を創れるよう精進あるのみです。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ

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