2万年前へ ~タイムマシン・ラリー~

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 僕は、鬱蒼とした草に身を潜め、やつが出てくるのを待った。黄色に茶の斑点、口からはみ出た大きな牙、サーベルタイガーだ。
 もうすぐ、生肉につられて僕が敷いた布の上を通る。足は泥だらけだから、布に足跡がつくはず。それを現代に持ち帰れば、優勝だ。ライバルの時谷は、ソ連でスターリンの髭を剃ろうとし、逮捕された。僕はそんなヘマはしない。
 肉を食べ終えたタイガーが去った後、布を回収し、タイムマシンに向かった。いつの間にか、数頭の大型犬に囲まれ、僕は恐怖した。顎周りの筋肉が発達したダイヤウルフだ。「ガルル」と牙を剥き出す。肉の汁が布についていたに違いない。やつらはサーベルタイガーの食べ残しを狙う。
 干し肉を与えると、ウルフは尻尾を振って食らいついた。
「クゥーン」
 食べ終えて、体を擦り付けて甘えてきた。マシンの助手席に上がろうともしてきた。僕は、賞金で犬を飼おうかと考えつつ、エンジンをかけた。
青春
公開:20/08/20 20:45
更新:20/08/20 20:46

吉村うにうに( 埼玉県 )

はじめまして。田丸先生の講座をきっかけに小説を書き始めました。最近は、やや長めの小説を書くことが多かったのですが、『渋谷ショートショート大賞』をきっかけにこちらに登録させていただきました。
飼い猫はノルウェージャンフォレストキャットです。
宜しくお願い致します

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