神より大切なもの

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犬神は怖いものである。
呪術で禍々しいものになる場合もある。

そのように聞いていたが。
これは。これは。

『すみません。僕を守っているものってどんなものですか』
『あなたを守るのは犬神ですね』
彼は目を丸くして驚いた。
『犬ですか。どんな感じの?』
神主はしげしげと彼の後ろを眺めて応えた。

『とても大きく、とても白く、とてもふわっふわっです。
これではそこらの悪いものが取り憑くことはないでしょう。そのぐらいふわっふわっです』

彼を腕の間に置いて犬神は満足そうだ。
まるで好きな玩具を構うように舐めまわしている。
人の背丈ほどの大きさの顔を擦り寄せてうっとりしている。
体毛はまさに神と言えるほど白く輝く。
私でも一瞬躊躇うほどふわふわとしていて、近付くにも大変だ。
優しそうな顔つきは少し柴犬にも似ている。

彼の年齢を聞くと、それはこの社の狛犬が盗まれた年と一致した。
もしかして…
公開:20/08/18 23:40

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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