ライトニング・フラッグ

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テレビ画面が割れたかのような凄まじい轟音に、俺は思わず耳を塞いだ。
先頭のランナーに雷が落ちたのだ。
一億ボルトをまともに浴びて吹き飛ぶ選手。
耐雷スーツで感電は免れたとしてもダメージは大きい。リタイアだろう。

雷雨の中を何キロも駆け抜け、丘の上に立てられた旗を奪取する競技、ライトニングフラッグ。
レースは佳境に差しかかっていた。

丘の直前で、落雷の恐怖からランナーたちの足が止まる。
しかし、その隙に飛び出した選手がいた。日本代表の桑原選手だ。
慌てて他のランナーも走り出すが、追いつけない。
後続が相次ぐ落雷でリタイアする中、彼は黒い風のように走った。
そしてついに、フラッグに手をかけた瞬間――

閃光。

どうなった――

テレビカメラが映し出したのは、燃え上がるフラッグを力強く掲げる桑原選手だった。
彼の名を連呼する実況アナにつられて、俺も絶叫した。

「クワバラ! クワバラ!」
その他
公開:20/08/18 21:53
空想競技2020

広瀬 ひとり( 湘南 )

面白そうだと思って始めました。
400文字に収めるって、難しい。

noteやってます▶︎https://note.com/hitori_cough

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