都会の若者よ、村へ来たれ!草刈り選手権
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「熱中症になっちまうだ。麦茶飲め」
婆さんは、鎌を持って一心不乱に草を刈る僕を引っ張り、旅館のような家屋の仏間へと連れて行った。
「いや、まだ半分も終わってないよ」
「終わらんでええ。一人暮らしなんで、助かるわ。好きなの食え」
彼女は、飲み物と菓子を勧めてきた。
「夕方までに沢山刈って賞金取りたいんだよ」
優勝賞金は五十万。何としてでも欲しい。
「あの花見ろ。マリーゴールドじゃ」
話がかみ合わないと思いながら庭を見ると、橙色が草陰を照らしていた。
腰を上げようとすると、婆さんは肩を押えた。
「今日うちで飯食ってけ。こっちのヤマモミジどうじゃ? 秋になったら綺麗じゃぞ」
掌の形の葉は美しく風にそよいでいた。
「まずい、時間がない」
婆さんの話に付き合ううちに、空が茜色になってきた。
「賞金には及ばんが、お礼じゃ。また来い」
夜、満腹になった僕は負けたが、悪い気はしなかった。
婆さんは、鎌を持って一心不乱に草を刈る僕を引っ張り、旅館のような家屋の仏間へと連れて行った。
「いや、まだ半分も終わってないよ」
「終わらんでええ。一人暮らしなんで、助かるわ。好きなの食え」
彼女は、飲み物と菓子を勧めてきた。
「夕方までに沢山刈って賞金取りたいんだよ」
優勝賞金は五十万。何としてでも欲しい。
「あの花見ろ。マリーゴールドじゃ」
話がかみ合わないと思いながら庭を見ると、橙色が草陰を照らしていた。
腰を上げようとすると、婆さんは肩を押えた。
「今日うちで飯食ってけ。こっちのヤマモミジどうじゃ? 秋になったら綺麗じゃぞ」
掌の形の葉は美しく風にそよいでいた。
「まずい、時間がない」
婆さんの話に付き合ううちに、空が茜色になってきた。
「賞金には及ばんが、お礼じゃ。また来い」
夜、満腹になった僕は負けたが、悪い気はしなかった。
青春
公開:20/08/19 21:59
はじめまして。田丸先生の講座をきっかけに小説を書き始めました。最近は、やや長めの小説を書くことが多かったのですが、『渋谷ショートショート大賞』をきっかけにこちらに登録させていただきました。
飼い猫はノルウェージャンフォレストキャットです。
宜しくお願い致します
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