行く先のない道

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新車の走りは快適だ。
誰もいない道を僕は走っていた。道はまだしばらくまっすぐなはずだ。アクセルを思いきり踏む。スピードのノリも上々。
前方に1台の車が見えた。
「ちっ。」
貸し切りは終わりだ。前方の車は少し古い型で制限速度ぎりぎりで走っている。追い越し禁止だがかまうものか。スピードを上げて追い越した。何かがチカっと光った。バックミラーの中にその車はもう見えなかった。
「なんだ、曲がる車だったのか。」
しばらく行くと今度は古い軽トラがギシギシと走っていた。軽トラも追い越した。ギシギシ音もバックミラーの中の軽トラもすぐに消えた。
雑音が入り始めたカーラジオに手を伸ばし、スピードを緩めたその時、1台の車が僕の車を追い越した。

「ね、ねえ!今追い抜いた車が消えたわ!」
「どこかで曲がったんだろ。」
「ここ一本道なのよ!」

僕はまっすぐな道を快適に走っている。ラジオが入らなくなった事を除けば。
その他
公開:20/08/19 21:32

文月そよ

のんびりゆるぅり書いてみたいと思います。

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