縦笛えんぴつ

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今度の音楽コンクールを最後に、僕らは小学校を卒業する。なのに、直前練習の出来が最悪。
先生が、焦りと怒りを堪えている。
そのプレッシャーが今、縦笛でソロパートを吹く子に集中する。
「吹く息が単調!もっと表現力!」
先生の指示は的確。その子は追い詰められ、今にも泣き出しそうだ。
そこで僕が、勇気を出した。
縦笛えんぴつを使って、その子に代わり、ソロパートを吹き始めたのだ。
「何。このヘビーな縦笛の音」
と先生。じゃ、これは?と鉛筆を替えて吹く。
「ビ、ビューティフル」
と先生。最初はHの鉛筆で、二回目はBの鉛筆で吹いた。三回目は、とっておきのHBで吹く。ホット・ブルースな音に、我ながら聞き惚れた。先生が、感極まって言う。
「音楽コンクールとは関係なく、先生にそれを一本、譲って貰えないかしら!?」
「一二本じゃなきゃダメだな」
「どうして一二本?」
「ん?
 ……
 だって一応、鉛筆だから」
その他
公開:20/08/19 19:43
更新:20/08/19 21:07

久保田 人月

よろしくお願いします。
note「久保田正毅」でも、ショートショートをシェアしています。

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