カナ釣り

ーあの、初めてなんですけど。私もいいですか。
ーええ、もちろん。大会はさっき始まったばかりだから。釣り竿は無料でお貸しします。あ、参加費はえさ代として百円ね。
ーあ、お安いんですね。
ー大勢に参加してほしいから。最近ちょっとカナが増えすぎて困っていて。この大会はカナ駆除にもなるんです。あ、とは言っても釣ったカナは捨てませんよ。干物にして食べるんです。

受付をすませて会場に向かうと、湖は大勢の釣人で賑わっていた。

ーおー！さすが三年連続王者、どんどん釣れますね！
ーそれは「ン」？
ー「ン」じゃなくて「シ」だよ。鰓を切って逃げられた。次は完璧な「シ」を釣るぞ。
ー志が高いなぁ。あ、僕のにも何かかかった！
大物の手ごたえに胸が高鳴る。
ーおいおい！それはカナじゃない！カンジはだめだー！！
制止の声が聞こえるも勢いがとまらない。竿をふりあげると、手足をバタバタさせて空高く「人」がとんでいった。