きみについて行く
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小さい頃うちは貧乏だった。僕は犬が欲しくて想像のなかで犬を飼った。散歩している犬たちを観察し、触らせてもらい、考えているうちにどんどん本物らしくなった。耳はピンと立ち、しっぽはふさふさ、毛はザラリとしていて、背に手を当てると小刻みに震えている。僕が退屈していると散歩したそうにリードを咥えてくる。
僕は犬と散歩しているつもりで、想像のなかのリードを手にした。右手をギュッと握りしめ外を走り回った。
5年生になるころにはうちも人並みになり、誕生日に自転車を貰った。友達と乗り回して遊ぶうち、僕は犬のことを忘れてしまった。
大人になって娘ができた。歩き始めた娘は、歩いては何かに引っ張られるように尻もちをつき、そのたびに振り返っては笑顔を見せる。
よいしょと立ち上がると、握りしめた右手をクイっと引いて歩き出す。
そうか、お前はずっとここにいたんだな。
娘がヨタヨタ歩く後ろに懐かしいあいつが見えた。
僕は犬と散歩しているつもりで、想像のなかのリードを手にした。右手をギュッと握りしめ外を走り回った。
5年生になるころにはうちも人並みになり、誕生日に自転車を貰った。友達と乗り回して遊ぶうち、僕は犬のことを忘れてしまった。
大人になって娘ができた。歩き始めた娘は、歩いては何かに引っ張られるように尻もちをつき、そのたびに振り返っては笑顔を見せる。
よいしょと立ち上がると、握りしめた右手をクイっと引いて歩き出す。
そうか、お前はずっとここにいたんだな。
娘がヨタヨタ歩く後ろに懐かしいあいつが見えた。
ファンタジー
公開:20/08/17 20:43
ボケ防止にショートショートを作ります
第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。
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