哀感ハーモニカ
28
12
日暮れの公園が朱の光に染まる。
ベンチに座り、俺は独りハーモニカを吹く。
生き別れの妹よ。
お前は今どこにいる。
父さんがいつか吹いていたこのハーモニカ。
覚えているかい、妹よ。
この歌がもしお前の胸に届いたならば——
瞼を開くと、目の前に制服を来た少女が立ってた。
ハーモニカを吹く俺をじっと見つめている。
何か言いたそうに唇を震わせて。
切ない想いを堪えるように眉を寄せて。
俺は音を止めた。
「どうかしたかい?」
少女は目を伏せて、心を決めかねるように肩をすぼませる。
「言ってごらん」
「あ、あの…」
キッと少女の眉に力がこもる。
「そのベンチ、まだペンキ塗り立てですよ?」
「ああ」
俺は硬く表情を変えずに瞼を閉じた。
「もちろん知ってるよ。あえて、ね」
「そ、そうですか」
立ち去る少女の背中に、俺は哀感たっぷりのハーモニーを捧げた。
きっとクリーニングじゃ落ちないだろうな、と思った。
ベンチに座り、俺は独りハーモニカを吹く。
生き別れの妹よ。
お前は今どこにいる。
父さんがいつか吹いていたこのハーモニカ。
覚えているかい、妹よ。
この歌がもしお前の胸に届いたならば——
瞼を開くと、目の前に制服を来た少女が立ってた。
ハーモニカを吹く俺をじっと見つめている。
何か言いたそうに唇を震わせて。
切ない想いを堪えるように眉を寄せて。
俺は音を止めた。
「どうかしたかい?」
少女は目を伏せて、心を決めかねるように肩をすぼませる。
「言ってごらん」
「あ、あの…」
キッと少女の眉に力がこもる。
「そのベンチ、まだペンキ塗り立てですよ?」
「ああ」
俺は硬く表情を変えずに瞼を閉じた。
「もちろん知ってるよ。あえて、ね」
「そ、そうですか」
立ち去る少女の背中に、俺は哀感たっぷりのハーモニーを捧げた。
きっとクリーニングじゃ落ちないだろうな、と思った。
その他
公開:20/08/17 20:38
最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。
ログインするとコメントを投稿できます