運命の10分間

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10分間待ちます。君がそう言うや否や僕は家を飛び出した。10分間だ、この10分間で彼女の要求に答えられるか否かが僕の運命を決める。しかし考えのないままにそこら中を走り回るほど馬鹿ではない。しっかりと目的地を定めた上で走り出すのが合理的な人間の行動だ。
2分間深く考えて行き先を決め、僕は一心不乱に走り出した。あと8分。3分で到着し2分で目的のものを探し3分で帰ってくれば良い。いける、僕はそう確信した。
ところが彼女の欲するものは見つからなかった。目的地の設定を間違えたのか、探し方が足りなかったのか、それは分からない。ただ僕は手ぶらで彼女の元に帰らざるを得なかった。「約束通り結婚はお断りさせていただきます。」彼女は僕に向かって言い放った。当然の報いであろう。僕を振った次の日、 彼女に月から迎えが来たという噂を聞いたがきっとほら話だろう。 人間が月に帰るなんて、そんなこと起こるはずがないのだ。
ファンタジー
公開:20/08/17 15:57

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