都会のセミと食卓の華

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「ただいま」
 私が玄関で靴を脱いでいると、廊下の奥から母が顔を出した。
「おかえり、もうすぐご飯だから、早く着替えてらっしゃい。あっ、それとついでにマサシを起こしてきてくれる?」
「寝てるの?」
「なんか、朝までゲームやってたみたいよ」
「あいつ! 夏休みだからって、良いご身分ね」
 私はキッチンへ顔を引っ込めた母を横目に階段を上がっていった。
 そして部屋に入り、素早く部屋着に着替えると、弟の部屋の前で声を掛けた。
「おーい、マサくん、晩御飯だってよー」
 何度かドアをノックしたが、一向に起きてくる気配がないので、私は諦めて食卓へ向った。
 子供じゃあるまいし、お腹が減ったら降りてくるでしょ。
 「おかあさん、で、今日の晩御飯って何? 揚げ物?」
 私がキッチンへ入ると、シャワシャワと心地よい音が響いていた。
「うん、今日はから揚げよ、セミのから揚げ、あんたたち好きだったでしょ?」
その他
公開:20/08/17 08:13
都会の蝉に関わるアソートメント

柚須 佳( 東京 )

柚須 佳(ユス ケイ)と申します。
緻密な世界設定なものが好きです。

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