クリーニング店の妻の悩み

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嫁いで早十年。クリーニング業界は相変わらず窮地に追いやられている。
客足が遠のくばかりか、店内には数年も引き取りにこない行き場のない衣類が溢れ、問題は山積みだ。
それに旦那も…。

この十年で三十キロ増量しただらしのない体。ゴルフ場から持ち帰った全身の染み。滲み出る脂と加齢臭。
清潔感が第一のクリーニング店にとって致命的な身なりに、日々苛立ちは募るばかり。
「もう限界!」
クリーニング師の国家資格を持つ自らの腕を信じ、寝ている旦那に手をかける。
ヘラで染み抜き剤を浸透させ、ブラシで叩き、バキュームで吸う。界面活性剤に浸けて洗った後、乾燥機で乾かし、丁寧にアイロンをかけて圧縮袋で仕上げた旦那は、見違えるほど美しくなっていた。
「あら、あの場所が役に立つじゃない」
引き取り手のない衣類の森の真ん中へそっと旦那を差し込む。
パイプに触れたハンガーが咳き込んだように、コトンと小さく鳴った気がした。
ファンタジー
公開:20/08/17 08:12

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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