神を打倒する少年

　新築のマンション内で奇病が蔓延し、住人たちは恐怖に戦慄した。突然に脚や腰や首が重くなり、それが原因で寝たきりの状態に陥る病だった。

　住人たちは囁いた。
「この土地は元々お稲荷様の祠があった場所だ」
「祟りだ」
「こんな物件買うんじゃなかった」

　そんな中、ひとりの少年だけが元気良く遊び回っている姿を住人のひとりが目撃した。
　大人たちは少年を詰問した。
「なあ、坊や。キミは、何か秘密にしていることがあるのかい？」
　少年は、泣きじゃくりながら、自身の秘密を大人たちに聞かせた。

　数日後、マンション内での奇病は収束を始め、平和な日常が戻りつつあった。
　以前と何が違うのか、管理する不動産屋は不思議に思いながらも、住人たちの嘆願によって改定された物件購入要項を眺めた。

『犬のペット可。むしろ、犬を飼うことを推奨する』

　少年は今も、親に隠れて飼っていた子犬と一緒に遊んでいる……。