レプリカ

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毎日、空を見ている。
青にも種類があって、雲の形も同じものは無い。
色は青だけというわけでなく、オレンジやピンク、紫の時もある。
夜は星が瞬き、数年前には彗星が見えたこともある。

『変化があって面白いよね』

僕が言う。
みんなが口を揃えてこう応える。

『投影機の映像なんて、何も特別じゃない』

人類がシェルターで暮らすようになったのは、もう100年も前のことだ。
空は投影機で映されたもので、昔の記録を流しているのだ。
昔は人口空に振れるほど余力がなく、雑なものだった。しかし現在は技術が進歩して本物と遜色がない。そう授業で聞いた。
人ひとりの一生よりも長く記録があるらしい。
だから僕は同じ空を見たことがない。
たとえ映されたものだとしても、綺麗なものには違いない。
何故みんなは本物を知らないのに偽物を嫌がるのだろう。
僕には遠い天井に広がる空こそが本物に思えるのに。
ファンタジー
公開:20/08/16 23:23

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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