羽根あればこそ

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やっと主人が寝入った。テーブルのカタログが気になる。
羽根がないんだ。得意そうに言ってた。どうかしてる。私たち、羽根を繰ってなんぼだ。そりゃ若くはない。節々に小さな傷、部屋を見回すだけの人生。でも、いつかはこの羽根で空を飛びたい。そんな野望を胸に秘めてた。身を退く時はちゃんとはねのある後任にたすぎを繋ぐつもりだった。
あんな羽根もへちまもない棒っきれとか、すかすかの輪っかとか、でかいこけしみたいのとかに主人が心移りするなんて。ギョーザだって羽根付きだよ。気づくと、首を振っている。私ったらまた。
深夜、羽根のついた人が窓から入ってきた。
―祝福を。汝を神の国に迎えます。
ふわりと浮いた。羽根だ、羽根の揚力だ。
私たちは窓を出て、夜空を上る。
―これまでの行ないに応じた羽根が授けられます。着いたら、仲間の羽根を見てみなさい。
どんな見事な羽根が見れるだろう。私は生まれ変わった羽根に力を込めた。
その他
公開:20/08/18 17:00
更新:20/08/19 18:06
空想競技 ただいま 型落ちの意地 #113

こぶみかん( 関西 )

ssの庭に迷い込んだこぶみかん。数々のお話の面白さに魅せられ、通い始めた。
気が付いたら、庭の片隅に挿し穂されていた。
いつか実を結ぶまでじっくり育つといいね。

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