代表選手の心得

　陸上競技世界大会100m日本代表・武杉玄信は185cmの高身長ながら均整のとれた強靭なフィジカルと類稀な運動センスを持ち日本陸上競技史上最高の天才と言われた。
　しかし、優しすぎる性格が災いし練習では世界記録を更新するも試合では力を発揮できないでいた。
　そこでコーチ陣は彼に催眠術をかけた。ドーピングにもならない。メンタル強化の為、生死をかけ戦う戦国武将の暗示をかけた。催眠状態にある事がバレないよう他者との接触を避け、練習は個室で大会想定VRの中、ルームランナーやエアロバイク等を使用。心・技・体の揃った彼は人類史上最速となった。
　その日、コーチは彼の日記を目にする。
『主君の為に誰よりも速く戦場を駆け抜け武勲を積むが武士の本懐　しかしながら拙者は敵兵不在の中　地に固定され進まぬ道や馬を駆け　観衆に大道芸人の如く囃し立てられる始末　主君に申し訳なくかくなる上は切腹し…』
　催眠術中止！！