一対の呼吸

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僕が吸う。
君が吐く。
僕らの肺は繋がっている。

一卵性双生児の僕らは産まれた時から呼吸を共有している。

それ以外は順調に成長していた。
いつものように定期診察を受けた日。
自分だけ麻酔が切れるのが早くで起きてしまった。
そこで医師たちの会話を耳にした。

『彼女のほうは自発的に呼吸できるが…』
『彼は吸うだけで吐くことはできないな』

僕の記憶だと妹は息を吐くだけだったはずだ。
成長が進むにつれて人工肺との併用で2人を分つ話が出ていた。
医師たちの話が確かなら、僕は……

ある日、私だけ麻酔から目覚めてしまった。
まだ幼い自分にもわかった。
兄は自分で息を吐けない。
だから2人が離れる時、兄は……
それから何年も息を吐くことしか出来ないフリをしている。

私達は2人でひとつだから。
あなたが吸って、私が吐く。
ずっと共に生きていこうよ。おにいちゃん。
その他
公開:20/08/18 00:01

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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