運動会が見たい

弁当箱を開けると、比較的綺麗におかずが整っていた。通勤時に二回もリュックを落としたので、グチャグチャになったかと心配していたのだが杞憂だったらしい。
唐揚げ、ウインナー、卵焼き、エビフライ、そしてコーン。娘の好きなモノばかりだ。
｢休みたい？｣
真っ青な空のキャンパスに飛行機雲が伸びる。グラウンドに引かれた白いラインが目に浮かぶ。
｢こんな時に何言ってんだ！｣
オフィスにビンタの音が響く。パァンと、こちらはスターターピストルに似ている。
｢す、すいませんでした！｣
男は頭を床に叩きつける。土下座の体勢が組体操みたいだ。
｢もう遅い！こいつを縛り上げろ！｣
皆が男に群がる。これは大玉転がしだろうか。
｢準備はいいな？ よおし投げろ！｣
縛り上げられた男に向かって、皆が石を投げ始めた。これはもちろん、玉入れだ。
色白だった男は、次第に真っ赤になっていく。運動会、見に行きたかったなあ。