曲芸対決

「こうして毎日、同じことの繰り返しじゃ実につまらん。いっそ誰が一番、客の目を引くことができるか勝負せんか？」
　その提案を聞くや否や、「いいですね！　我々の仕事は本来、見られてナンボのモデル業。ぜひ、勝負しましょう！」と、返事が飛んできた。

　こうしてそれぞれが曲芸のようなものを披露し、園内での人気を競うことになった。

　サルは客が投げる餌を口でジャンピングキャッチし喝采を浴びる。
　ゴリラは糞のキャッチボールを披露。キリンは長い首を筆のように動かし、文字当てクイズを出す。
　企画の発案者であるライオンは、咆哮にメロディをつけ激しく歌う。客たちは目当ての動物の前で歓声をあげた。

　スタッフルームに男が入ってくる。
「おつかれさまです！　大成功ですね！」
「全国の動物園で入場者数を競うこの戦い、ウチの勝利で決まりだな」
　男はライオンの着ぐるみを椅子にかけながら、安堵の笑みを浮かべた。