踊る花かつお

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知識を足し算とすると、引き算されるのが魔法を信じる心なんだ。と君が言った。
何そのキザな言い回しと私は応えた。
私は焦っていた。早く結果を出したいと休日も休む気分にはなれなかった。
少し休んだ方がいいよ。と君は続けた。
こうしている間にも皆は努力していると私は信じてやまなかった。
君は昼食にとお好み焼きを作ってくれた。
ソースの香り。青のりとゆらゆらと踊る花かつおに目を奪われた。
昔おばあちゃんが「ほれ、鰹節が生きてるよ」と教えてくれて目を輝かせた日を思い出した。
君は見透かしたように僕も生きていると本気で信じていたなとつぶやいた。
確かに。花かつおは生きていないと分かっている。
でもゆらゆら揺れるその様は生きていないと言い切れない不思議な何かがあった。
君の言いたい事が少しだけ分かった。

私は資格試験の参考書を閉じる。
まだ休日は1日残っている。外がこんなに明るい事にやっと気が付いた。
その他
公開:20/08/16 09:42

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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