親子リレー
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「はい、向井、なんだ尚樹か」
電話口で父が笑う。
「父さんさ、小説家になりたかったって言ってなかった?」
「何だ、藪から棒に。いつだ」
「言ってたよ、じいちゃんのお葬式の時に酔っ払って泣きながらーー」
「も、もう良いよ。お前も作家志望だったか。これはもう呪いだな」
「呪い?」
「お前にじいちゃんの形見を送るわ」
一冊の薄い大学ノートには、筆ペンでびっしりと文字が書かれていた。その一つに目を走らせる。
『はい、昇天のお時間です。今日も未練があって成仏出来ないこちらの皆さんとお送り致します』
鬼の面を付けられた元人間たちがうず高く積まれた座布団の上でぐらぐらしている。
『座布団が貯まった方には、来世への切符を差し上げます』
皆、競うように答える。また一つと座布団を重ねていくが、そのうちの一人が身体を乗り出しすぎて落下する。
『残念。もう一度頑張って』
鬼面の目からポロリと涙が零れた。
電話口で父が笑う。
「父さんさ、小説家になりたかったって言ってなかった?」
「何だ、藪から棒に。いつだ」
「言ってたよ、じいちゃんのお葬式の時に酔っ払って泣きながらーー」
「も、もう良いよ。お前も作家志望だったか。これはもう呪いだな」
「呪い?」
「お前にじいちゃんの形見を送るわ」
一冊の薄い大学ノートには、筆ペンでびっしりと文字が書かれていた。その一つに目を走らせる。
『はい、昇天のお時間です。今日も未練があって成仏出来ないこちらの皆さんとお送り致します』
鬼の面を付けられた元人間たちがうず高く積まれた座布団の上でぐらぐらしている。
『座布団が貯まった方には、来世への切符を差し上げます』
皆、競うように答える。また一つと座布団を重ねていくが、そのうちの一人が身体を乗り出しすぎて落下する。
『残念。もう一度頑張って』
鬼面の目からポロリと涙が零れた。
その他
公開:20/08/16 09:20
向井尚樹です
とうとうフルネーム
続く
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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