サヨナラ流しそうめん

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祖母は、今年のお盆も大量のそうめんを茹でている。サヨナラ流しそうめんというらしいが、実際に流しそうめんをして食べるわけではなく、サヨナラの意味もわからず、ずっと不思議に思っていたので、祖母に尋ねてみた。
「おばあちゃん、なんで『サヨナラ流しそうめん』って呼んでいるの」
「『灯籠流し』って聞いたことがあるじゃろ。お盆に死者の魂を弔って灯籠を川に流す行事のことじゃ。そうめんは村の特産品で、お盆の供え物にもなっているから、灯籠の代わりに流すんじゃ。
サヨナラとは、お盆の時期にこの世に帰ってきた死者の魂があの世に戻っていくときの別れの挨拶じゃ」

私は当時、子供だったので理解できなかったが、サヨナラ流しそうめんの光景を見ていると、先祖や、この川で水難事故に遭い不慮の死を遂げた人たちの魂を弔っていることに気がついた。
お盆になると、今は亡き祖母の代わりに茹でたそうめんを川に流し、そっと手を合わせる。
青春
公開:20/08/16 07:13
更新:20/08/16 09:32
スクーのお題 「サヨナラ流しそうめん」 祖母 お盆 灯籠流し 死者 この世 あの世

山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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