鬼門で寝る

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立読みした雑誌に鬼門で寝ると良いアイディアが降りてくると書いてあった。その夜、布団の位置を北東に回転させて、ぎゅっと目を瞑る。

『はい、昇天の時間です。山田くーん! はまだこっちに来てないのか。ちょっと、そこで寝てる君、暇でしょ? 座布団運ぶの手伝って』
「え、あ、はい」
布団からずるりと這い出て歩み寄る。
『怖いねぇ、貞子じゃないんだからさ。君、名前は?』
「向井です」
『向井くんね、じゃこれを皆さんにお配りして』
鬼の面とこん棒を配りつつ、顔を見ようとしたがぼんやりしてて分からない。
『はい、有り難う。向井くん、邪魔だから袖で待ってて』
「あ、はい」
舞台では鬼の面とこん棒を持たされた解答者たちが、必死にお題に答えている。司会がいいねえ、と良いながらも正解は出ない。必死に答えていた黄色の着物の鬼がポロリと面を落とす。
「ーーじいちゃん」
こちらを見て、にっと笑った。
その他
公開:20/08/15 23:12
向井お前 いい加減にしろ

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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