死の宣告

　男の前に神を名乗る女が言う。
「あなた、あと数分で死にます」
　男は驚いた。
「嘘だ。死にたくない」
「ヒトの常識や願望は関係ありません」
「…お前は何がしたい？」
「あなたの死に様を見て笑うことです」
　女はケラケラと笑う。笑いやがった。

「死んで、僕はどうなる？」
「輪廻転生。魂は浄化され、新たなモノに宿る。それが有機か無機かは知らない」
「お前も…いつかは、死ぬんだろ？」
「私は不死。ヒトの常識で私を測るなって言わなかった？　バカ？」

「…喜怒哀楽、か」
「？」
「感情があるのなら、心があるのなら、いつかアンタが苦しんで悶える未来が期待できる。その時を、今度は僕が観察してやるよ。いつか」
「そんな日は来ない、絶対に」
　女は笑い続けた。
「未来まで否定するのは、バカの…証だ。死ね…クソ女」

　男が死んだ。
　後に残された女は、少しだけ、ほんの少しだけ、まだ見ぬ未来に恐怖した。